ここは、横浜市泉区にある「いちょう団地」。
県内最大の公営住宅で、外国人が多く住んでおり、高齢化率が高いといった特徴があります。
高齢化が進み、買物に課題を感じる方が増えたことから、地域住民が主体となって移動販売を実現させました。
団地で行われる移動販売「いちょう市」
この日の開始時刻は午前11時。15分ほど前から移動販売をしている事業者の方々が集まり、準備を進めていきます。慣れた様子で、あっという間に売場が出来上がりました。
この日販売されたのは野菜、食料品、日用品、パン、クッキーなど。
開始から多くのお客さんで賑わいます。
時間になると200mほど先の次の場所へと移動し、この日は3か所での販売を行いました。
「移動販売があって本当に助かっている」
この「いちょう市」では、購入したものを地域のボランティアの方々が家まで運んでくれることも。
毎回移動販売を利用している方は、「いつも楽しみに待っているの。うちはお父さんが車椅子だから、水も運んでくれて本当に助かっている。」と話してくださいました。
買物に行くのが大変で助かっている方もいれば、販売場所でのお喋りを楽しむ方、いちょう市で販売される野菜やパンなどを楽しみにしている方など、様々な方がこの移動販売を利用していました。
主催しているのは「いちょう団地地区社会協議会」のみなさん
この移動販売は、地域住民が主体となっている「いちょう団地地区社会福祉協議会」が主催しています。
買物に来た人に「最近どう?」と声をかけ、体調を確認したり、一緒にお話を楽しんだりしています。
みなさんのやりがいは「地域の人に喜んでもらえること」。地域住民自らが必要性を感じ、実現したこの移動販売が、多くの人に利用してもらえることに喜びを感じています。
八木幸雄さん(いちょう団地連合自治会 会長)にもお話を聞きました。
「『いちょう市』は買物に不便を感じている団地の人のために、ローソン、スコップ上飯田、上飯田地域ケアプラザなどと協力して始めました。」
「この団地は高齢者が多いので、コロナ禍では感染が怖くて外に出られない。また、最上階は5階なので、階段の昇り降りがあるせいで、出るのがおっくうになってしまう方も多かった」と言います。
「人と話すことも、元気の秘訣のひとつ。今は、前より人に会う機会が少なくなっています。買物の場としてだけではなく、コミュニティの場としてこの移動販売を利用してもらいたい。」
八木さんはこの団地に住んで50年以上。昔は賑やかだったこのまちに、いまは子どもの声が聞こえないのが寂しいと感じているそうです。移動販売などの活動を通して、まちが若返り、活性化することを目指して活動をされています。
また、様々な事業者などが協力してくれることについて、「住民以外の方も、地域のために、手を貸していただいているのはありがたい。協力してくれている方にも良かったと思ってもらえるような場所にしていきたい。」と語ってくださいました。
移動販売に参加している事業者の皆さん
全国でもそう多くないローソンの移動販売車両を使って、この団地の方々が求めている商品を届けています。
「継続していくと、少しずつその地域の要望やニーズがわかってくる。『あの人はこの商品』など、人を想像しながら商品を選定しています。」
「外出ができない高齢の方のために」と始めた移動販売。積み込み作業など通常の営業より大変な部分もありますが、需要は高まっていると感じているそうです。
地域活動支援センター「スコップ上飯田」は、自分たちで育てた野菜を販売。
この移動販売の話を聞き、地域貢献の趣旨に賛同して参加を決めました。
毎回販売を担当している利用者さんは、「いろんな人と挨拶をしたり、話すのが嬉しい。野菜をたくさん買ってもらえることも嬉しい。」とやりがいを話してくださいました。
就労支援B型事業所の「いずみのさと」は、パンの製造や販売などをしています。
「近所にこのような販売の場があることで、自分たちの活動を知ってもらえる。」
この日も仕込みは朝の6:30から。販売をする利用者さんも「接客することが楽しい」と、充実した時間になっているそうです。
地域活動支援センター「工房四季」は、種から手作りしたクッキーや、手工芸品を販売。
クッキーも人気ですが、お仏壇に置くおりん台もよく売れるそう。
いちょう市に買物に来る方には、色々な需要があるようです。
地域住民を中心に、様々な方が積極的に関わることで実現した移動販売。お近くの方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
編集後記
自分たちが住む地域の課題に対し、多くの人が協力し合い、解決していく。その活動の中でも様々な交流が生まれており、チームとしての一体感を感じました。地域は自分たちの力でより良くしていける、そんな希望を感じました。